だれかが働いた足跡に囲まれて

 仕事帰りのカーラジオから流れるラジオドラマ。どこかの国からきた女の子。「私が深夜,寝ずに作ったコンビニの弁当。そんなに悪いか。あなたの母さん,電話で『ちゃんとごはん食べてるの?コンビニ弁当ばかり食べてるんじゃないでしょうね!』って。私寝ないで作った弁当。そんなに悪いか。」涙が出そうになる。ネパールのホテルに泊まったとき,輝く瞳で接客してくれた男の子は,屋上に続く階段の踊り場に無造作に置かれたベッドで眠っていた。「働きがい」は,「生きがい」。「働きがい」は,自分が感じること。仕事に救われることだってある。そして私たちは,誰かが働いた足跡に囲まれて,支えられて生きていく。(樋口典子 2018)